匂いの形容

 匂いの形容を捜している。うまく形容できないのがもどかしいのだ。
 味の場合、甘い、酸い、苦い、塩っぱい、旨い、辛い、渋い、水っぽい、コクがある、というような形容ができる。
 匂いは、そういう形容詞に乏しい。基本味や三原色に相当する基本臭というのはないと書いてある本もあった。具体的な物の名前を挙げるくらいしかないかもしれない。しかし、その物を知らなくても想像くらいできるように匂いを形容したいのだ。
 たとえば、ピンクの煙が立ちのぼるような薔薇の香り。しびれるようなアンモニア臭。甘く香ばしいアーモンド臭。涎を催すようなバニラの香り。ひりひりとくさいニンニク臭。わずかにくどい胡麻の香り。むせるようなチーズの匂い。くすぐったい石鹸の匂い。
 どこかに匂いの形容の教科書のようなものはないものか。