キンモクセイ満開

 朝、通勤路沿いの民家の脇を通ると、花の香りとすれちがう。匂いとぶつかっても痛くも痒くもないが、すれちがいざま薄い生地の袖が触れるような、一種はかない煙たさがある。ちょっとミカンに似ているような、もう少し気取った感じの、甘い匂い。すぐにキンモクセイだなと判る。トイレの芳香剤に使われている印象が強いが、悪い匂いではない。わりとはっきりした、いい匂いだ。キンモクセイの匂いは、ひらひらと近づいたかと思うと遠ざかる。振り向くと、塀の中から顔を出している緑の樹の葉むらに、オレンジの花が湧くように咲いている。やっぱりキンモクセイだ。先週くらいから咲き始めたようだ。その前は匂わなかった。