においの表現
においを嗅ぐと古い記憶でも鮮明に具体的によみがえるということはときどき体験することだ。
実は、においを伝える神経というのは視覚や聴覚とは違って、大脳皮質を経由しないで直接に海馬(記憶に関与する)や扁桃体(情動に関与する)に達する。このため、理性的な判断を加える余地なく体の機能や行動に影響を与えるのではないかという。*1
とすれば、においの表現としては、体や心への影響を表現するのが適当かもしれない。
胸騒ぎを覚えるにおい【内臓感覚】
吐きそうな臭い【内臓感覚】
眠くなる臭い【内臓感覚】
ひりひりするにおい【痛覚】
はじけるようなにおい【触覚】
とろけるようなにおい【触覚】
ざらざらしたにおい【触覚】
すっぱいにおい【味覚】
にがいにおい【味覚】
うーん。いまいち?
においの記憶はもともと視覚などと比べれば強烈な記憶とはなりにくいが、その代わりに失われるのにかかる時間もそうとうに長引くのだという。
本をちらっと観ただけで後になってからも鮮明に記憶している映像的記憶を持つ人がいるそうだが、それってじつはそのときの画像を無意識にそのときのにおいと結びつけて覚えているんじゃないだろうか。ふつうなら各ページごとに異なるにおいがするわけはないが、鋭敏な嗅覚を持つ人は時々刻々に移り変わる環境臭を各ページに結びつけて覚えていたりしないだろうか。映像的記憶と呼ばれるような鮮明な記憶力のある人(長期記憶しやすい人)は匂いに敏感なのかもしれない。
そうでなくても、この長期記憶性と鮮明な記憶性、これは覚えたいものを覚える必要があるときに応用すると効果的かもしれない。