においの表現手法としての体性反射描法

id:quaint1719さんの「私日記」の「お題:においを効果的に文章にする」に、きのうコメントしたときには次のような例を即興で作ったけれども、においを「(名詞)のにおい」というのもいいが、その代わりに「(体性反射)するにおい」としてみるのもいいと思う。

薔薇の香り 気高くもほろ酔い気分になれるにおい
チーズのにおい 鼻をしかめながらも近づけたくなるようなにおい
焙った醤油のにおい 湧き出る唾液が喉にしみ込むようなにおい

におい部にコメントを書いたいくつかのにおいなら、こんな感じになりそう。

ベビーパウダーのにおい うっかりすると咳きこんでしまうくすぐったいにおい*1
グレープフルーツの香り さわやかでありつつもおちつくにおい*2
メープル臭 ちょっと息が止まるような、それでいて体を預けてしまいたくなるようなにおい*3
ごはんのにおい そのまま目を閉じて眠ってしまいたいようなしあわせなにおい*4
山椒の香り 虫歯がうずくような、背筋が伸びるようなにおい*5

*1:におい部ではこう書いた。「粉っぽくて、うっかりすると咳きこんでしまうベビーパウダー。潔癖で、つんとすましているくせに、だきしめてくるにおいはくすぐったい。」

*2:におい部ではこう書いた。「柑橘系のさわやかさを帯びた酸っぱい微風の中にほろ苦い煙がわずかに混じったような、若々しくて、しかもちょっと大人びた匂い。」

*3:におい部ではこう書いた。「メープルシロップの甘やかで、なんとなく焦げたように香ばしくて、どこかスパイシーでもある、あのにおい。メープル風味のコーヒーを淹れたときなんかの強いメープルのにおいには、ふとカレーに似た感じを覚えます。ソトロンの香り?」

*4:におい部ではこう書いた。「炊きあがったごはんのいいにおい。炊飯器のふたを開けると白いごはん粒がつやつやして、白い湯気がたおたおと立つ中にひろがる、柔らかくてかすかに甘い、ふかふかのにおい。」

*5:におい部ではこう書いた。「ひりりとした山椒の香り。粉山椒はうどんに振りかけたりします。七味唐辛子にも入っています。しょうゆとよく合うので、塩昆布とか佃煮にも使われます。この香りで、味が締まります。葉っぱは「木の芽」と呼んで和食の彩りに使われたりしますが同じようにひりっとした香りがします。古傷が痛むような、生乾きの涙のような、癒えかけた悲哀を感じる香りです。」