「夏の盛」を訳しなおす
たまたま見つけたとあるウェブページ*1に、この詩が載っていました。
【夏の盛】作/デエメル 訳/森鴎外
わが故郷を日が染める
高穂が熟してふくれる、パンの温さに。
黄金色であつた子供時代と同じに。
大地よ。われ汝に謝す。
燕はわれを呼ぶ、瑠璃色の空へ。
白雲は光の上に光を積む、塔の高さに。
瑠璃色であつた青年時代と同じに。
太陽よ。われ汝に謝す。
「つまらん。陳腐。古くさい。」という感想を抱かれるだろう詩の見本、ということで書いてあるので、「ほんとにそうかな」というあまのじゃくな気持ちになりました。
ひとつ、訳しなおしてみよう。
ふるさとを太陽が染める。
背の高い穂が熟れてふくれて、パンのぬくもりをくれる。
きんぴかだった子供のころから変わらずに。
大地さん。ありがとう。
ツバメが、すきとおる青い空へ招く。
白い雲はひかりをつみかさねて、みあげるほどの塔になる。
すきとおるほど青かった若いときから変わらずに。
太陽さん。ありがとう。
おなじ詩でも、ずいぶんと印象は変えられるものだと思いませんか?