翻訳

「純情小曲集」より「旅上」(萩原朔太郎)

原文 ふらんすへ行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し せめては新しき背広をきて きままなる旅にいでてみん。 汽車が山道をゆくとき みづいろの窓によりかかりて われひとりうれしきことをおもはむ 五月の朝のしののめ うら若草のもえいづる心まかせに…

みだれ髪(与謝野晶子)にある短歌

訳してみました。 ほてる肌にふれもしないで「人として」さみしくないのそんなあなたは 与謝野晶子の元歌はこう。 やわ肌のあつき血汐にふれも見でさびしからずや道を説く君 ちなみに、チョコレート語訳(俵万智)だとこう。独特の万智節になっていますね。 …

「山のむこう」カール・ブッセ

やまのむこうのそのむこう いいことあるとみんないう ああ、つれだってもどったら めにはなみだのすじふたつ やまのむこうのもっとさき いいことあるとみんないう 「山のあなた」カール・ブッセ(上田敏訳)『海潮音』より*1 *1:http://marieantoinette.hime…

Imagine|おもってみて|かんがえられる?

ジョン・レノンの Imagine にはいろんな訳があります。(忌野清志郎の*1がわりと好きです。) もうひとつ付け加えてみました。(あ、ふたつか。) 原詞意味訳詞 Imagine there's no heavenおもってみて。てんごくがないって。てんごくはない It's easy if yo…

「春の朝」改訳

ロバート・ブラウニングの劇詩『ピパ、過ぎゆく』(1841年)221行以下の日本語訳です。 上田敏により「春の朝(あした)」として翻訳され、『海潮音』に収録された訳が有名ですが、元の詩では脚韻が踏んであるのに訳ではそれが失われています。 そこで、脚韻…

ひらがな にっぽんこくけんぽう 《だいきゅうじゅうななじょう》

このくにいちばんのこのきまりがにっぽんのわたしたちにうけあう、ひととしてしてよいことは、ながいながいとしつきをかけてむかしからのひとびとがくびきをほどこうとしてやっとのことでてにしたもの、これらのしてよいことは、これまでいくつものきびしい…

ひらがな にっぽんこくけんぽう 《はじめに》

にっぽんのわたしたちは、まじめにかたよりなくえらばれたくにぜんたいのあつまりに、みんなのきもちになりかわってはなしあうひとたちをおくることにしました。そのひとたちのはなしあいによってなにをどうするかをきめることにしました。わたしたちとわた…

Chanson d'automne(秋の唄)Paul Verlaine

ポール・ヴェルレーヌの「Chanson d'automne(秋の唄)」を訳してみました。 上田敏の「秋の日のヴィオロンのひたぶるにうら悲し」の訳(訳題「落葉」)で有名な詩です。 いくつかの有名な訳がこちらで紹介されています。 http://pinkchiffon.web.infoseek.c…

Nature (1836) Ralph Waldo Emerson

アシモフの短編「夜来たる」のきっかけになったエマーソンのエッセイの一部を訳してみました。ちょびっとだけ。(斜体の太字の部分が「夜来たる」のきっかけになった箇所です。)出典:http://oregonstate.edu/instruct/phl302/texts/emerson/nature-emerson…

「夏の盛」を訳しなおす

たまたま見つけたとあるウェブページ*1に、この詩が載っていました。【夏の盛】作/デエメル 訳/森鴎外 わが故郷を日が染める 高穂が熟してふくれる、パンの温さに。 黄金色であつた子供時代と同じに。 大地よ。われ汝に謝す。 燕はわれを呼ぶ、瑠璃色の空…

siseneG(記世創)を訳してみました

ギズモードに「SF界の巨匠アーサー・C・クラーク氏がこの世の終わりを語った31ワード」という記事が出ていて、クラークの最期の小品が掲載されています。 And God said: DELETE lines One to Aleph. LOAD. RUN. And the Universe ceased to exist. Then he p…

後だしジャンケン

「憂い顔の『星の王子さま』」加藤晴久(書肆心水)を読みました。憂い顔の『星の王子さま』―続出誤訳のケーススタディと翻訳者のメチエ作者: 加藤晴久出版社/メーカー: 書肆心水発売日: 2007/05メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 53回この商品を含むブロ…

冬来たりなば春遠からじ

星新一のエッセイを読んでいると、この「冬来たりなば春遠からじ」と「命短し恋せよ乙女」がときどき出てきます。有名な言葉なんでしょう。 原文はこうです。 If Winter comes, Can Spring be far behind? これは、パーシー・ビッシュ・シェリーの長詩『Ode …

もくじ

レオン・ウェルトに 最初は献辞です。 1章 6才のころ、絵をあきらめました。 2章 王子さまとは、砂漠のまんなかで出会いました。 3章 王子さまの謎が、すこし、明かされます。 4章 王子さまの惑星は、とてもちいさいのでした。 5章 惑星を破壊するバオ…

27章

そして、6年が経ちました。 27章 さて、ほんとに、もう6年になるんですね…。このお話をするのは、最初で最後です。ともだちはまた会えて、わたしが生きているのをとてもよろこんでくれました。ほんとは悲しかったんです。でもわたしは「つかれたよ…」って…

26章

王子さまとの別れのときがきました。 26章 井戸のとなりには、むかしの石の壁の名残りがありました。仕事にもどった次の日の昼下がりになると、ちいさな王子さまがその上にすわって、足をブラブラさせているのが見えました。こういっているのがきこえまし…

25章

王子さまは明日で地球にきてちょうど一年なのでした。 25章 「ヒトは」と、ちいさな王子さまはいいました。「急行列車に乗るけど、なにをさがしてるのか、もうわからないんだ。躍起になって、グルグルまわってるだけなんだ…」 そして、こうつづけました。 …

24章

王子さまと、水を探しに出かけました。 24章 砂漠での不時着から、八日めを迎えていました。物売りのお話をききながら、手持ちの水の、最後のひとしずくを飲みました。 「あぁ!」と、わたしはちいさな王子さまにいいました。「思い出話はいいけどね、飛行…

23章

王子さまは物売りにも会いました。 23章 「こんにちは」と、ちいさな王子さまがいいました。 「こんにちは」と、物売りがいいました。 のどの渇きをスッカリ鎮めるという、粒ぐすりの物売りでした。ひと粒飲めば、一週間、なにも飲みたくなくなるというも…

22章

王子さまは、列車で行き交う人々を見ました。 22章 「こんにちは」と、ちいさな王子さまがいいました。 「こんにちは」と、線路を切り替えるひとがいいました。 「ここでなにをしてるの?」と、ちいさな王子さまはいいました。 「旅行するひとたちを仕分け…

21章

王子さまは、キツネに、ある秘密を教わります。 21章 そこに、キツネがあらわれました。 「こんにちは」と、キツネはいいました。 「こんにちは」と、ちいさな王子さまは答えて、そぉっと見まわしましたが、なにも動くものはいません。 「こっちだ」と、声…

20章

庭に咲き乱れるバラの花に、王子さまは落ちこみます。 20章 それでもちいさな王子さまは、砂を、岩を、雪を越えて、長いこと歩きとおして、とうとう、道を見つけました。道という道は、たどれば、ひとに行きつけるものです。 「こんにちは」と、あの子はい…

19章

高い山に登ってみても、ひとりぼっちのままです。 19章 ちいさな王子さまは、高い山に登りました。それまで、知っている山といえば、ひざにとどくかどうかという3つの火の山だけでした。火の消えた山に、こしかけたりしていたものです。「こぉんなに、高…

18章

砂漠の花と、すこしだけ言葉をかわしました。 18章 ちいさな王子さまは、砂漠を横切って、一輪の花に出会いました。花には、3枚の花びらがありましたが、ほかはなんにもないのでした…。 「こんにちは」と、ちいさな王子さまがいいました。 「こんにちは」…

17章

砂漠のヘビと知り合いになりました。 17章 思いをこめようとすると、すこし、ウソになってしまうことがあります。街灯のあかりをともすひとのお話をしたときのわたしは、正直きわまる、とはいえませんでした。わたしたちの惑星について、知らないひとには…

16章

そうして地球へやってきたのでした。 16章 7番めの惑星は、そんなわけで、地球でした。 地球は、どの惑星ともちがいました! 王さまは111人(もちろん、黒人の王さまも忘れずに)、地理学者は7千人、実業家は90万人、お酒飲みは7百万人とさらにその半分、…

15章

6番目の小惑星では、地理学者から地球を勧められました。 15章 6つめは、10倍もおおきい惑星でした。そこには、年かさのりっぱな男のひとが、ぶあつい本を書きながら、暮らしていました。 「これはこれは! 探検家と見えるな!」その年かさのひとは、ちい…

14章

5つめの小惑星にいたのは、街灯のあかりをともすひとでした。 14章 5つめの惑星はとてもかわっていました。どれよりもちいさいのです。街灯のあかりがひとつと、それにあかりをともすひとがひとりいるだけで、もういっぱいなのでした。ちいさな王子さま…

13章

4つめの小惑星にいたのは、実業家でした。 13章 4番めの惑星は、実業家のものでした。このひとは、仕事で頭がいっぱいで、ちいさな王子さまがやってきても、顔をあげることもできないようでした。 「こんにちは」と、あの子はいいました。「タバコの火が…

12章

3つめの小惑星にはお酒飲みがいました。 12章 そのつぎの惑星には、お酒飲みがいました。ちょっと寄り道しただけだったのに、ちいさな王子さまは、ずっぷりと気分が落ちこんでしまいました。 「なにしてるの?」と、お酒飲みに声をかけたのです。からっぽ…