19章

 高い山に登ってみても、ひとりぼっちのままです。

19章

 ちいさな王子さまは、高い山に登りました。それまで、知っている山といえば、ひざにとどくかどうかという3つの火の山だけでした。火の消えた山に、こしかけたりしていたものです。「こぉんなに、高い山なら」と、だれにともなくいいました。「惑星じゅうを、グルッと、ひとというひとを、一目で、見わたせるよね…」でも、なんにも見えませんでした。見えたのは、切り立った岩のトンガリだけでした。

 
「こんにちは」と、いってみました。
 
「こんにちは…んにちは…にちは…」と、こだまが返りました。
 
「きみは、だれなの?」と、ちいさな王子さまはいいました。
 
「だれなの…れなの…なの…」と、こだまが返りました。
 
「ともだちになってよ、ひとりなんだ」と、いいました。
 
「ひとりなんだ…とりなんだ…りなんだ…」と、こだまが返りました。
 
「なんてへんな惑星なんだろう!」と、そのあとで思いました。「みんなみんなカサカサで、みんなみんなツンツンしてて、みんなみんなしょっぱくて。ひとには想像力のカケラもないし。いったことをくりかえしてる…。うちには、花がいたよ。寄るとさわると、話しかけてきてくれるんだ…。」

《参考》
フランス語原文 http://www3.sympatico.ca/gaston.ringuelet/lepetitprince/chapitre19.html
英語訳の一例 http://www.angelfire.com/hi/littleprince/framechapter19.html
※イラストは、青空文庫「あのときの王子くん」の画像を参照させてもらっています。
※写真は、次の場所から参照させてもらっています。
 (サハラの岩石砂漠)http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/53/Libya_5076_Tadrart_Acacus_Luca_Galuzzi_2007.jpg/800px-Libya_5076_Tadrart_Acacus_Luca_Galuzzi_2007.jpg