宇宙/地球/ヒト
なんでも、宇宙はビッグバンで始まったらしいね。なにもかもがまるで一点に集まったみたいに集中していたときがあったらしい。まっしろで、熱くて、朦朧としていたのかな。
ビッグバンで始まった時間と空間は、すぐにまっくらで、広々として、冷え冷えとした、からっぽの闇みたいになってしまった。そんな宇宙だけど、少し冷えると目に見えないくらい小さい無数の粒子を含んでいたんだって。
その粒子はほとんどすべてが、ひとつの陽子のまわりにたったひとつのもっとずっとずっとちっぽけで軽い電子がとりまく単純な構造の水素原子だったそうだ。
どんなに希薄でも、どんなに遠くても、しだいに粒子は寄り合って、粒子の雲は銀河をつくり、銀河の中で、粒子の雲は星をつくった。
星のまわりには自分では光らない惑星やそのまわりをまわる衛星も生まれたりして、そして夜しかなかった世界に昼が生まれた。
強く集まった粒子は融合し、光を放ち、やがて燃え尽きると、あるものは爆発して、まわりに別の星ができるきっかけになることもあったんだって。
なんども星の世代を重ねるうちに、炭素原子や酸素原子、鉄原子や重金属原子みたいにだんだん重い原子が作られていってね。
その種類、つまり元素は、とうとう100を超えた。
元素は、その原子核のなかにある陽子の数、つまり原子番号で分類できる。
原子はその原子番号と同じ数だけの電子にとりまかれてて、それで電気的には対等の強さで反対の性質を持っている陽子と電子のバランスがとれてるんだな。
その最も外側の電子が、外交担当だ。その電子が、その原子と他の原子との反応のしかたを決める。
元素の最も外側の電子の数は、原子番号とともに周期的に増減する。電子が原子番号といっしょにだんだん増えて、ある数になると、電子殻と呼ばれるその階は終わり。次のもうひとつ外側の階にひとつだけ電子が居ることになる。その様子は、周期表にまとめることができる。
宇宙のなかのあらゆる物質は、ひとつ以上の元素の組み合わせでできた分子が集まったものなんだ。分子は同じ種類の分子どうしで集まる傾向があるんだね。だから物質を指差したりさわったり、瓶や袋に詰めてみたりできるんだな。
そんな宇宙の片隅に天の川銀河はあって、その片隅に太陽は輝いていて、そのまわりを一年かけて一周している地球があって、その地球のまわりをひとつき足らずでまわる月がある。
地球には固い鉄の芯、そのまわりの融けた鉄の芯、そのまわりの熱い岩石層マントルが層をなし、表面には薄い地殻が張って、うっすらと水が浮き出していて、その水のせいで地球は青い星に見える。水は水蒸気になって白い雲をつくるから、それで地球は青と白の混じった大理石みたいに見える。
マントルが熱対流で流れると、表面の地殻はひび割れ、引きずられて移動し、ところどころで衝突しては埋もれて沈んでいくんだ。一年で数センチ。十億年で数万キロ。
そんな地殻の上で炭素化合物の反応が進み、コピーを作る遺伝物質が生まれた。
遺伝物質とそれをとりまくタンパク質や脂質はより集まって、膜を張って、目に見えるか見えないかくらいの粒になった。
化学反応を維持できる小部屋ができた。工場といってもいいのかな。それが細胞。
細胞は環境により適したかたちのものが生き延び繁栄してだんだん種類が増えていった。
進化したわけだね。
ある細胞は集まったまま全体として出っぱりやくぼみを作り、なにかをしたりされたりするのに都合のいいしくみを備えるようになった。つまり、多細胞生物になった。
生物は海から陸へ、さらには空へ、その繁殖領域を拡げた。
そんな生物の一種が、ぼくらだ。ヒトだ。
ヒトは、同じ種どうしでかたまって暮らす。いざとなれば、手も出す。足も出す。口も出す。ヒトは、言葉を使い、道具を使い、火を使い、そしてその組み合わせを工夫して、どんどん改良した。そうしながら、ヒトの集団どうしが衝突すると、しだいに融合してより大きな集団となり、その集団は、ほら、もう、この惑星を覆ってしまった。
自分たちのいるこの惑星を覆い尽くしたら、その後ヒトはどうなるんだろう。枯れるのかな。惑星を飛び出して、よそに広がるのかな。その両方なんだろうか。
できれば枯れないで、広がっていってほしいなあ。