地球は丸い

「この地面は、どこまでも平たくはない。大きなボールみたいに、地球は丸いんだ。」
 地球は丸いということ。たぶん、この事実は小学校に上がる前に本で読んで知ったのではなかったかと思う。
 ヒトが宇宙に出て、月にも行って、青くて丸い地球の写真が撮られていた。そういう写真とともに「そうだ」と言われると信じるしかないような気にはなったと思う。そんな写真を見たときの感覚は、どこか嘘っぽくって、それでもきれいで、とにかく不思議だったと思う。
 おそらく、外に出たときこのことを思い出すと、地面を触ってみたこともあっただろう。アスファルトの路面。黒くて平たくて固くて、叩くとぴたぴたと音がする。叩いた手が少し痛い。ざらついた路面。日差しを受けている日なたはちょっと暖かい。日陰ならひんやりと冷たい。足を踏み鳴らしてみたりもする。とん。とんとん。ジャンプしてみる。ジャンプ! 地面は、もちろんなんともない。この盤石な感じのする地面が、地球の丸い面の一部なんだ。そう思うと自分が小さなボールのような地球の上に危なっかしくしゃがんでいるイメージが浮かんで、よろめきそうになる。