ポール・グレアム「書くこと(短く)」Writing, Briefly (PAUL GRAHAM)

     たまたまポール・グレアムさんのエッセイのページ http://www.paulgraham.com/writing44.html
    たどりついたら、短いものは67分で書いたとありました。
     id:doyu さんによるその日本語訳が http://d.hatena.ne.jp/doyu/20050523 にあります。
    (id:doyu さんの訳は http://www.paulgraham.com/writing44.html の「Japanese Translation」
    からリンクされています。)

     趣味で書き直してみたので感謝をこめて id:doyu さんに送ろうと思ったのですが、日記へのコメントも
    メールもできなさそうだったので自分の日記に貼っておきます。
    (PAUL GRAHAMさんのFAQ http://www.paulgraham.com/gfaq.html によれば、日本語訳を公開すること
    は許されているようですから。)

      • -

http://www.paulgraham.com/writing44.html


書くこと(短く)


2005年5月


(電子メールに返事をしているうちに、たまたま書くことについての短いエッセイを書きあげた。通常私は一本のエッセイに数週間を費やす。これは67分。書くのに23分、手直しに44分。)


思うに、うまく書くというのは、たいていの人が理解しているよりずっと重要だ。書くというのは単にアイディアを伝えるのではない。アイディアを生み出しているのだ。もしあなたが書くことが下手でそれを嫌っているなら、書くことで生まれるはずのアイディアをほとんど失っていることになる。


うまく書くにはどうするか、ここに短く書いてみる。できるだけ早くバージョン1を書こう。下手でいい。何度でも繰り返し書き直そう。不要なもの一切を捨てよう。会話のノリで書こう。下手な書き方に敏感になろう。そうすれば下手さが見えるようになって、自分で直せる。好きな書き手の真似をしよう。書きはじめられない場合、書く予定の内容について喋ってみて、自分が喋った内容を書き下ろそう。こう考えよう:エッセイの80%は書きはじめてからできあがるものであり、はじめに書いたものの50%は書き損じだ。大胆にどんどん削除しよう。書き上げたら読んでくれて、わかりにくいとか、ここはいらないと教えてくれる信頼できる友人を持とう。詳細なアウトラインの作成にこだわらない。書きはじめる前に考えるのは2、3日でいい。小さいノートか裏紙を常に携帯する。冒頭の文が浮かんだら書きはじめよう。その前に締め切りが迫っていたら、単に一番重要な文で書きはじめよう。好きなことを書こう。印象的に見せかけるのはやめよう。書いている最中にその場でトピックを変更することをためらわない。余談には脚注を使おう。文をよりあわせるには同じ言い回しを使おう。エッセイを声に出して読み、(a)不格好なフレーズを見つけ、(b)どこが退屈か(読みたくない段落か)を見つけよう。読者には新しくて役に立つことを言うように心がけよう。たっぷりと時間をとって取り組もう。書きかけから再開するときは、そこまでを読み直してから始めよう。書き終えるときは次にまた再開しやすくしておこう。書こうと思っているトピックをファイルの末尾に書き留めておこう。すべてのトピックを網羅しなくてよい。あなたほどには注意深く読まない読者のために書こう:流行歌が安物のカーラジオでも聴けるように作られているのと同じだ。なにか間違ったら、すぐに訂正しよう。どの文がいちばんひっかかるか、友人に尋ねよう。読み返して、刺のある発言を訂正しよう。オンラインで公開しよう:なぜなら読者がさらに書くようにせかしてくれるだろうし、さらにアイディアが生まれるだろうから。画面上で見るだけでなく、印刷しよう。単純でドイツ風の固い言葉を選ぼう。余談と本筋を区別することを学ぼう。書きながらエッセイの終結を予期し、ちょうどそこで終えよう。