後だしジャンケン

 「憂い顔の『星の王子さま』」加藤晴久書肆心水)を読みました。

 読んで、自分なりの翻訳を見直しました。おかげさまで、ちょこちょことあちこち直しました。
 
 著者は文中で「アホ」だの「頭が悪い」だのと、まあ口は悪い。(そんな著者が、「はじめに」で、かつて恩師にいさめられた経験を披瀝しつつ「でも先生。」と語る前書きは、どこかかわいいような気もしました。)口は悪いけれども、不真面目ではない。むしろ、大まじめで、多数の翻訳例を列挙しての説明は、翻訳のしかたについて、かなり参考になりました。
 
 これをきっかけに、自分なりの翻訳では、この本に出てこない(既存の訳では使われていなかった)訳語に選び変えたりもして、楽しかったりもしました。
 たとえば、キツネの出てくる第21章に現れる「apprivoiser」を「染まる」、「perdre le temps」を「(時間を)すごす」、「créer des liens」を「かけがえのない相手になる」、「rites」を「お約束」とするとか。
 
 これとは別に、ウェブサイト「星の王子さま総覧 Rassemblement du Petit Prince」も参考にさせてもらいました。この本とは多少意見(解釈)が違うところもありましたが、同じようにとてもおもしろい(というか、すごい)情報源です。

 
 先人の翻訳や翻訳批評を読んで修正したりするのは「後だしジャンケン」なのかもしれませんが、ためらいはありません。最終的な完成度が少しでも改善されるなら、おおいに結構なことだと思うからです。
 
 それにしても、「星の王子さま」の研究者が、こんなに多いとは思っていませんでした。そのうち「星の王子さま学会」とかできてしまうんじゃないかな。なんて思ってしまいます。