今朝みた夢

 こんな夢をみました。「Le Petit Prince」翻訳の後遺症かも。
 すこし不正確ですが、だいたいこんな感じでした。

 
まっくらな空。またたかない星。灰白色の地平線。そこは月面。
灰白色の月の砂のうえに、なにかがあります。車輪のようなもの。
横だおしになって、砂のうえに載っているように見えます。
自転車の車輪のようですが、すこしちがいます。
車輪は銀色の金属製です。
ゴムのタイヤはなく、うすい羽根のようなスポークがたくさんついています。
それが、音もなく、ゆっくりと回転しています。
傘をまわすように。ターンテーブルのように。
これは、人類が生まれるよりもはるかむかしにつくられた、技術的な遺物なのです。
 
そばに、まっしろの宇宙服を着たこどもがいます。
日よけのバイザーで顔ははっきりわかりません。
でも、黒っぽい髪で、やや浅黒い顔の、ちいさな男の子です。
名前は、ラムセスくん。
 
そのわきに、同じタイプの宇宙服を着た、少し年長の若い男の人がいます。
Aさん(仮名)です。
白い肌で、明るい色の髪の毛で、めがねをかけていて、巻き毛です。
考えることが好きそうな、おとなびた、自信ありげな顔をしています。
名前はわかりませんが、学者です。
この銀色の車輪がなぜ砂に埋もれないでまわっていられるのかを解きあかしました。
 
Aさんは、そのことで、最近ノーベル物理学賞をもらったのです。
まわりつづける車輪は、物理法則を破っているわけではない、というのでした。
ただ、月の重力と月の砂の浮力を利用しているだけなのです。
ただし、信じられないくらい、とても高い効率で、それが成しとげられているのです。
Aさんは、そのしくみをくわしく解きあかしたのでした。
 
Aさんは、ノーベル賞の金メダルに金色の鎖をつけて、首からさげています。
月にくるおおぜいの観光客から、いつも見せてほしいとたのまれるからです。
それに、ラムセスくんも、いつもその金メダルに「さわらせて」とたのむからです。
 
あるとき、月の観光客のなかにテロリストがまぎれこんでいました。
そして、あやまってAさんを拳銃のようなもので撃ちました。
Aさんはケガをして、しゃがみこみました。
宇宙服の右胸のあたりが赤くなっていました。
ラムセスくんはかがみこんで、Aさんを気づかっていました。
Aさんは「だいじょうぶだよ」というように腕を振ってみせました。
テロリストは警備の人たちにつかまったようです。
でも、だからといってAさんのケガは治りません。
 
すると、ラムセスくんの具合が急に悪くなりました。
倒れこみます。
Aさんはあわててラムセスくんをのぞきこみます。
もうAさんのケガはたいしたことではなさそうです。
ラムセスくんは起きあがりません。
ラムセスくんはそのまま死んでしまいました。
ラムセスくんは寿命が極端に短かったのでした。
ラムセスくんは古代エジプトの王さまの遺伝子から復元したクローン人間だったのです。
 
Aさんは、首を垂れてラムセスくんのお墓の前に立っています。
お墓は、月面の車輪のすぐそばにあります。
「これ、あげるよ。きみが持ってるほうが、価値がある。」
Aさんは、首にさげた金鎖をはずして、ノーベル賞の金メダルをお墓に掛けました。
金メダルが月の砂にゆっくりと沈んでいきます。
銀色の車輪はそんなことには関係なく、いつもと同じ速さでまわりつづけていました。