12章
3つめの小惑星にはお酒飲みがいました。
12章
そのつぎの惑星には、お酒飲みがいました。ちょっと寄り道しただけだったのに、ちいさな王子さまは、ずっぷりと気分が落ちこんでしまいました。
「なにしてるの?」と、お酒飲みに声をかけたのです。からっぽのビンの山と、まだ入っているビンの山を前にして、じっとだまっていたからです。
「呑んでるよ」と、お酒飲みは、よろめくように答えました。
「どうして、呑んでるの?」ちいさな王子さまはたずねました。
「忘れようってんだよ」お酒飲みは答えました。
「忘れようって、なにを?」ちいさな王子さまは、かわいそうに思いながら、ききました。
「はずかしいのをな、忘れようってえんだよ」お酒飲みは、頭をふらつかせながら、うちあけました。
「なにがはずかしいの?」ちいさな王子さまは、助けてあげたいと思いながらききました。
「呑んじまうってえことが、はずかしいんだよぉ!」と、吐きすてると、お酒飲みはキッパリだまりこんでしまいました。
ちいさな王子さまはといえば、とほうに暮れてしまいました。
おとなって、ほんっとに、なんて、なんて、おかしいんだろ、と、旅をつづけるちいさな王子さまは思いました。
《参考》
フランス語原文 http://www3.sympatico.ca/gaston.ringuelet/lepetitprince/chapitre12.html
英語訳の一例 http://www.angelfire.com/hi/littleprince/chapter12.html
※イラストは、フランス語原文のサイトの画像を参照させてもらっています。