「飛べない鳥は敏感です。人間が近づく前に危険を察知して逃げてしまう。」(旭山動物園 小菅正夫)

 行動展示で有名な旭山動物園の園長さんの言葉です。

 

 インタビューの中の次の言葉からの引用です。
「動物園の鳥はたいてい空を飛ぶための羽を切ってある。飛べない鳥は敏感です。人間が近づく前に危険を察知して逃げてしまう。うちの鳥は羽を切っていません。いつでも空に飛んでいくことができる。ですから客がそばに寄っただけでは逃げてはいかないんです。」

 

 飛べない鳥の処世術は、生き残りのための切実な手段ではあるのでしょうけれど、やはり不憫ですね。旭山動物園の鳥たちにしても、檻の中で暮らしているには違いありません。ですが、それでも飛べる力を保持していて、それゆえに、人を過度に恐れずに生きていけるのです。

 

 もっとも、はじめから飛べないペンギンやダチョウのような野生の鳥もいます。何世代も前の親の代から飛べないように仕立てられているニワトリのような鳥もいます。鳥といってもいろいろではあるのですけれども。

 

出典:野地秩嘉「企画書は一行」(光文社文庫