ホロコースト・ファンタジー:「ライフ・イズ・ビューティフル」
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タイトルもよくないと思います。どうしてイタリア映画のこの作品の日本語タイトルが「ライフ・イズ・ビューティフル」なんですか。La vita è bella がイタリア語の原題です。英語圏で英語のタイトルにするのはわかります。でもそれを日本で上映するときに英語をそのままカタカナにしただけのタイトルってどうなのかと思いますね。せめて「ラ・ヴィタ・エ・ベルラ─生きてることは素晴らしい─」とかに出来なかったのか、なんて思ってしまいます。
そのくらい、平和で日常的なシーンから始まるのですが、そこに、次第に戦争とナチスの影が忍び入ります。
主人公はイタリアに住む給仕。非常に機智に富み、よく喋る、お笑い芸人のようなユダヤ人です。叔父は給仕頭ですが、その叔父の所有する馬に派手な緑色のペンキが塗られてユダヤ人を侮蔑する落書きがされてしまったりします。そのうち、妻と知り合い、息子も生まれて、書店経営を始めるのですが、ユダヤ人であるがために、7歳になる息子ともども強制収容所へ送られます。妻はユダヤ人ではなさそうですが、自ら一緒に連れていってくれるように懇願し、容れられます。しかし、同じ強制収容所にはいても、男女は別々に暮らさなくてはなりません。
「これは楽しいゲームなんだ。1000点獲得したら本物の戦車がもらえるんだぞ」と息子に諭す父。ドイツ語を知らないのに通訳を買って出て、息子に言い聞かせていたゲームのルールに勝手に翻訳して喋るシーンは「勧進帳」の弁慶を上回る機転です。
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翌朝、所内に人影がなくなり、息子は隠れていた箱の中から出てみます。すると、戦車が現れるのです。連合国の戦車です。アメリカ人兵士が息子を戦車に載せてくれます。父の言葉は真実になったのです。信じれば、夢はかなう。それを絵に描いたような、ファンタジックなストーリーなのですが、やはり心は動かされてしまいます。
まもなく息子は母親を見つけます。父は帰りませんが、息子はこの物語を私達に語ることができるようになったことを示唆するナレーションでこの作品は幕を閉じます。とても充実した映画作品だと思います。