セクレチンの構造がまったく違う

 アシモフの「脳 生命の神秘をさぐる」(古書)では「セクレチンは全部で36個のアミノ酸を含んでおり、現在わかっているところでは、その構造は次のとおりである。」*1として次のように書いてある。(「Xは未知のアミノ酸である。」*2とも書いてある。)

lys3 arg2 pro2 his1 glu1 asp1 met1 X25

 少し今風に書けば次のようになるのだろう。

Lys-Lys-Lys-Arg-Arg-Pro-Pro-His-Glu-Asp-Met-X25

 いまwikipedia英語版のsecretinの項には次のように27個のアミノ酸からなる構造が書かれている。

HO2C–His-Ser-Asp-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Glu-Leu-Ser-Arg-Leu-Arg-Asp-Ser-Ala-Arg-Leu-Gln-Arg-Leu-Leu-Gln-Gly-Leu-Val–NH2

 アミノ酸の数からして違う。要素となっているアミノ酸の種類もずいぶん違う。
 ずいぶんと大きな測定誤りがあったのだなあと思う。アシモフが単に間違っていたというよりは、おそらく1960年代にはまだ正確な構造が究明中だったせいだろう。さすが、46年前の本(ほぼ半世紀前だ!)。*3

*1:I.アシモフ・著/桜井靖久・訳「脳 生命の神秘をさぐる」白揚社,1972.9.20 第1版第1冊,p.19

*2:I.アシモフ・著/桜井靖久・訳「脳 生命の神秘をさぐる」白揚社,1972.9.20 第1版第1冊,p.20

*3:なにしろまだホルモンが特定のホルモン受容体によってその機能を発現するということさえもまだわかっていなかった時代なのだ。この本には酵素に働いて酵素の作用を変化させるのではないかという仮説や細胞膜に作用しているのではという仮説が紹介されていて、「真相はまだ未解明のままである」となっている。