速読
ジュンク堂でお目当てだった「とめはねっ!」第4巻を買った。帰りの電車の中で取り出して、半分ほど読んだ。すると妻は「早い。そんなに早く読んだらもったいない」という。しかし、私はべつに内容を読み落としているつもりはない。だから早くても困らない。速く読んだせいで情報を読み落としていればもったいないが、そうでなければ速く読めたほうがよいだろう。ウェブコンテンツの表示応答時間は短い方がいいし、インターネットファイルのダウンロード時間は短いほうがいい。それと同じじゃないか。読み終えた後も頭の中にイメージは残っているし、読んだときの気持ちを反芻することもできる。そう説明したが、納得がいかないようす。楽しむ時間が短くなるからもったいないという。読み取り精度が落ちるなら困るが、そうでないなら速く読めるにこしたことはなかろう。長い時間楽しみたいなら、早く読めば同じ時間で繰り返し読むことだってできる。むかし、小さい頃には大人のいまほどは速く読めなかったろうけど、むかしの自分が今の自分に対して「そんなに速く読んだらもったいない」と言ったらどう答えるか、もっと遅く読もうと思うかと聞き返した。すると、そうは思わないが、それでも納得いかないということだ。まだ結末やその先を知らない途中の状態でその先に想いを馳せて楽しむことができなくなるともいう。私はコミックを読むとき、台詞を追い、ストーリーを追いかける。絵はそのために受け取る。すべてのコマ、すべての文字に目は通す。しかし、描線のひとつひとつ、背景の部分部分をくまなく吟味するわけではない。そうして読めばもっと遅くなるだろうが、それは踏み込んで研究したいときの話だ。エンタテインメントとして愉しむ分にはそこまでのこだわりは必要ないと感じている。もしかしたら交通標識を見てとっさに意味が分かるように記号的に絵を受け取っているかもしれない。この感覚が妻とは異なるのだろうか。