ブックオフ

 歩いて20分ほどのところにある市立図書館に行った帰りに、その近くにあるブックオフに入りました。新古書店というのか、明るく広く大きな店舗できれいに化粧直しのされた古書を売っている店です。この店ではマンガも含めて立ち読み自由なので、老若男女(とくに若い男女)の客がおおぜい立ち読みにふけっていました。二本の足で立ち、二本の腕で本を構え、首を前傾させて、食い入るように本に集中しています。


 私は感動しました。なぜって、こんなシーンは、動物園内では観られませんから。猿山の猿は人間の群像を思わせて見飽きないものですが、そこにもこんなシーンが繰り広げられることはありません。この書店での光景は、人間ならではの、景観です。


 私はそのなんでもないような光景に、素晴らしさを感じ、人々に親近感を感じ、自分がこうした人たちのひとりであることに誇りを感じました。


 人間だなあ。


 大げさなようですが、そう思って私はうれしくなりました。図書館ではそんなには思わなかったのに、ブックオフでそう思ったのはどうしてだったのでしょうか。明るい照明と、狭い面積に立ち並ぶ人の数の多さがその理由だったかもしれません。