銀座を散歩

 光通信にしてアンケートに答えたら、QUOカードをもらった。
 QUOカードなんて、どこで使えるんだろう。そう思って調べてみると、主に使えるのはコンビニ類。そのほかでは、玩具店博品館」でも使えるらしい。
 銀座にある「博品館」は、JR新橋が最寄駅。
 リカちゃん人形のコーナーがわりと充実しているらしく、妻のお気に入りの人形ショップのひとつだ。
 で、きのう行ってみたものの、これというものもなかったようで、結局なにも買わずじまい。

 その後、腕を組みながらそのあたりをなんとなく歩く。
「これって銀ブラ?」
 妻の問いに、「銀のブランコ?」「銀のブラジャー?」とか思いながら問い返す。
銀ブラ?」
「銀座をブラブラすること」
 ふーん。銀座の場合には、単にぶらぶらすることがそんなに特別な意味を持つのか。
 銀座をブラブラで銀ブラなら、池袋をブラブラしたら池ブラ、神戸を歩いたらコブラ、ある日半日ブラブラしたらアルハンブラか。

 ともかく、博品館からまっすぐ歩くと、いろんな店がある。
 夜七時くらいだったが、店の外にまで行列している美容室。
 高級感を狙った感じのドトール系の喫茶店。コーヒーいっぱいの値段がふつうのドトールの二倍くらいする。
 あるビルではショウウインドウにきれいなお菓子がディスプレイされていた。(ショウジョウバエらしき黒い影が見えたのは残念だった。)
 交差点にある交番は、黒っぽいガラス張りで、大きなモデル嬢の流し目で飾られているように見える。(すぐそばの看板が映りこんでいるだけなのだが。)
 と、その交差点は、先日銀座に映画を観にきたときに通った道だ。
 JR有楽町駅の近くまで来たことになる。

 そのあたりで空腹を感じはじめたので、イタリアンレストランに入る。
 私はピザ。妻はスパゲティ。
 食べ終わってからさらに歩く。

 そのうち、「YAESU」という字が見える。八重洲といえば「八重洲ブックセンター」がある場所。東京駅の近くだ。
 大きなコンクリートの塔が眼に入る。なんだろうと、一回りしてみる。高速道路のための換気塔ということだった。要するにガス抜きの煙突だな。
 その脇のビルの前庭風になっていて、路面には光ファイバーが埋め込まれていた。夜の闇の中、刻々と色の変わるとりどりの色彩が、点々と灯って美しい。そこにあるベンチでは、一組のカップルがキスを交わそうとしている。
 「いいなぁ」と思いながらそのそばを通り抜け、歩き続ける。
 夜行の高速バスの停留所には、長い行列ができていた。こんなふつうの週末にも大勢の利用者がいるものなんだなぁと思う。
「単身赴任のお父さんも多いんじゃない」と妻。
 そうかもしれない。とはいえ、老若男女と顔ぶれもかなり多彩だ。

 JRの駅に入ると、もう閉めようとしている店もある。
 ソフトクリームを売っている店があったので、テイクアウト。近くの柱のそばで立ち止まって食べていると、構内放送で山形新幹線の最終列車の案内が聞こえた。午後8時29分だった。
 東京駅の中をちょっとうろうろしてみてから、改札口へ向かった。

 改札口の手前にある、ある柱の中には、本物の魚が泳いでいる。水槽が仕込んであるのだ。
 どこかの母娘連れが通るとき、その小さな女の子が魚たちに注意を向けた。
 女の子は母親に驚きを報告したが、母親は無視。女の子は「しょうがないの」という風情で黙って母親を追いかけ、手をつないだ。

 その近くには、CHOKOCOSKというKIOSKがある。壁はチョコレートに擬してある。明治製菓とタイアップしているらしい。壁の広告を見るところでは「恋をしよう」キャンペーンみたいなのをやっているらしい。
 ふつうのKIOSKに並んでいる商品のほかに、明治製菓のお菓子のパッケージを使った文具等を売っている。(この文具類は博品館でも売っていた。)
 ぐるっと回るとそのKIOSKのある壁面には、XYLISHガムの広告があった。アルファベットばかりで書かれているので英語かと思ったら、ローマ字だった。全部大文字でローマ字で書かれた広告は読みにくい。声に出して読むと、つい外国人風の読み方になってしまう。「アナターワ、カミヲ、シンジマースカ?」みたいに。そういえば今年一月にあった従兄弟の結婚式での神父さんもそんなふうにしゃべる人だった。

 改札をくぐると、あとは一路、帰宅。帰ってから妻から聞いたところでは、今日の行程は一万歩と少しだったそうだ。