梅雨明け
きのう、梅雨が明けたそうだ。
きのうは夏雲が青空高く広がる上天気だった。
昼前に遠くない市立図書館まで妻と出かけた。
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電線で休む鳩のくぐもった声が和声を響かせていた。
夏祭りを控えて電柱と電柱のあいだに下げられた提灯が陽射しに色あせていた。
後ろに行き交う自動車のエンジンの低い響きを聞きながら横断歩道を渡った。
黒飴くらいのクマバチが白い花の奥に出入りしていた。
頭上にスズメの声を聞きながら狭い十字路を過ぎた。
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黒いアゲハ蝶が木漏れ日の陽射しと影の間を縫って飛んでいった。
コンクリートの下に流れる側溝に水の音を聞いた。
救急車のサイレンがどこか遠くに聞こえた。
梅の実くらいの青い柿の実がアスファルトの歩道に転がっていた。
駐車場の縁で背の高いタチアオイがピンクの花を暑さに揺らしていた。
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小学校は補修工事中だった。
校門の脇の桜並木の木陰に日に焼けた人夫が数人腰を下ろしていた。
人夫たちと笑いながら話をする警備員の婦人の眉が甲虫の鞘翅のように照りを放っていた。
中学生の男の子たちを乗せた自転車の群れが車道と歩道に広がって流れていった。
信号を待つ小さな女の子の広い額には黒い髪がひとすじ貼りついていた。
暑さははなはだしく、道はさながら夏の特売場だった。
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妻とときどき指をからめて歩いた。
この夏はじめての蝉の声を聞いた。
まばゆい緑に茂る樹が蝉の声で鳴いていた。