宇宙の小石

 「ザ・サイエンス・ヴィジュアル12 地球」という本を図書館で借りた。

地球 (ザ・サイエンス・ヴィジュアル)

地球 (ザ・サイエンス・ヴィジュアル)

薄いが、わかりやすく美しい写真が多く、興味深い。小さめの活字で割と文字もあるが、どのページにもふんだんにカラー写真が散りばめてある。

 いままで、石にはあまり興味がなかった。たとえば花崗岩とか玄武岩は、よく聞く名前ではあるが、具体的にどんな石をそう呼ぶのかは自分の中ではあいまいだった。そんな私にさえ、この本は興味を持たせてくれた。

 地球の構造は、チャイナマーブル(「かわり玉」)の飴のような、いくつも層を重ねた同心球になっている。たとえるなら、ゆで卵のほうがさらに適切かもしれない。たまごの殻(というより、むしろ薄皮)にあたる地殻、その内側の白身にあたるマントル、その内側の黄身にあたる核にわかれる。核はさらに、外側の液状の外核と内側の固体の内核にわかれる。

 大陸地域の地殻は、主に花崗岩でできている。花崗岩というのは、いわゆる石材の石だ。御影石とも呼ばれる。墓石に使われている胡麻入りの岩おこしのような石だ。花崗岩は火成岩に分類される。つまり火山活動によってできた石である。具体的には、地下のマグマが吹き出して固まった石である。花崗岩は、火成岩のうちでも「ゆっくりと」冷え固まってできた石であり、鉱物の結晶がよく成長するため、目に見えて大きめの模様がある。分類上は深成岩に属する。(参考:産総研ウェブページ地質標本鑑賞会岩石和名「か」の項目)

 大洋地域の地殻は主に玄武岩でできている。ついでにいえば、月の「海」の黒い部分も玄武岩だ。玄武岩というのは、いわゆる黒っぽい石碑の石である。石庭にでんと鎮座しているような、大きな黒い石だ。ものによっては赤っぽいものもあるが、青みを帯びたような暗い灰色のものが多いようだ。同じ火成岩でも「急速に」冷え固まった石であり、分類上は火山岩に属する。その中に含まれる結晶は小さくてガラス質の部分が多い。単一の組成からなる鉱物ではなく多様な鉱物が混在した岩石であるため、緻密な模様がある。マグマは、さらに急速に冷え固まると、天然のガラスともいわれる黒曜石になる。黒曜石は、黒いガラスのような艶のある石で、割れると鋭い切り口を持つ。古代人が石器を造るのにも重宝された。(参考:産総研ウェブページ地質標本鑑賞会岩石和名「け」の項目)

 地殻の内側にあるマントルは、主にカンラン岩でできていると考えられている。カンラン岩というのは、玄武岩よりも鉄のような重い金属を多く含むカンラン石でできた岩である。玄武岩を濃くしたような石だ。(参考:産総研ウェブページ地質標本鑑賞会鉱物和名「か」の項目)

 マントルの内側の、外核は鉄が主成分だ。しかも外核は液体である。鉄が水銀のように、金属でありながら固体ではなく液体になっているのは地中の外核の領域での高い圧力と温度のためだ。磁石のN極が北極を指すのは、外核液状化した鉄が原因だとされている。この外核部分の鉄が自転軸のまわりを流れることで電流を発生し、その電流の回転が自転軸方向の磁場を発生させるのだと考えられているのだ。

 外核で包まれたその内側の内核は、固体の鉄が主成分だ。内核では外核の領域よりもさらに高圧であるため、もはや液状化していられずに固体となっている。そのように状態が違っているとわかるのは、地震の波が外核内核の境界で屈折することからわかる。屈折するということは、その面を境にして物質の性質が異なっているということだからだ。

 地球はその表面の3/4に近い70.6%が海だ。それでも、海は地球全体からすれば、ほんの表層の存在にすぎない。水は、体積にして地球全体のおよそ0.1%。質量にして地球全体の約0.02%を占めるだけだ。そのうち氷河や氷床で固体の氷になっているのは体積で0.002%、質量で0.003%である。残りは石と金属(ほとんどが鉄)である。地球は水の惑星と呼ばれることもあるが、比率的にはその水の量はわずかで、石ころの表面にわずかに水の膜が張っているようなものなのだ。しかもその水の膜は、両極地方ではかすかに氷まで張っている。地球には、そのわずかな湿りのために緑の苔のように植物が繁茂し、それを食べる動物や、その動物を食べる動物までがうようよしている。そんな地球から見れば、私やあなたも、そうした微生物のひとつなのである。