匂い

 中村明「感覚表現辞典」を書店で見た。

感覚表現辞典

感覚表現辞典

 嗅覚のセクションをひととおり眺めた。
 「いいにおい」「いやなにおい」「(もの)のにおい」がほとんどで、それ以外となるとほとんどないが、それでもいくつかはある。「きなくさい」をはじめ「○○くさい」。こうばしい(香ばしい/芳ばしい)。かぐわしい(香しい/芳しい/馨しい)。すえた(饐えた)。
 匂いの立ち居振る舞い、そのたたずまい、触感のようなものを描出する方法が読み取れた。先人は、においが煙となって肌に触れ、鼻から脳内に届くさまを述べようとしたのだ。

 では試みに、においの表現をいくつか。
 わきがのにおいは、すえてささくれだち、のどがつまるような、どこかベビーパウダーのように粉っぽいにおい。
 桃の果実のにおいは、みずみずしいピンク色。
 焼香のにおいは、鼻の奥から眉間をつまむように刺激する。