「証明の展覧会」がおもしろい

 きのうジュンク堂書店で座り読み(椅子が置いてあるのだ)した本「証明の展覧会」がおもしろかった。

証明の展覧会〈1〉眺めて愉しむ数学

証明の展覧会〈1〉眺めて愉しむ数学

証明の展覧会〈2〉眺めて愉しむ数学

証明の展覧会〈2〉眺めて愉しむ数学

 さまざまな数学の定理や公式がなぜ成り立つのか、その証明をふつうの形ではなく図で示してみせる本なのだ。
 ピタゴラスの定理級数の和など各種の公式や、その他知らないような定理まで、それもいくつかの定理については何種類かの別証明が並べられている。


 よく覚えているのは次の式の証明。無限に続く足し算(級数)の和についての式だ。(この証明は「証明の展覧会II」のほうに載っている。)

(1/4)+(1/4)^2+(1/4)^3+...+(1/4)^n+... = 1/3

 これを証明するのに正三角形を描いてみせる。

 そしてその正三角形に倒立した正三角形を内接させて描く。外側の正三角形の各辺の中点が内側の正三角形の頂点となるわけだ。

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 こうすると、正三角形は小さな正三角形4つに4等分される。大きな正三角形の面積が1だとすると、小さな正三角形の面積はひとつあたり(1/4)だ。ここまでがひとつのポイントだ。まずもって、こういう形を描こうと思いつくのがすごい。


 ここまでで、正三角形は2階建てとなっている。上の段はひとつの上向き正三角形で構成されている。下の段は左側の上向き正三角形と中央の下向き正三角形と右側の正三角形で構成されている。上の段の面積は(1/4)だ。下の段の面積も、上の段の正三角形と同じ大きさの正三角形三つからできている。さらに、ここから先に進める。この決断がまたすごい。


 さて、先に進んでみよう。上の段の面積(1/4)の正三角形を同じ要領で四つに分ける。すると上の段の正三角形もまた2階建てとなる。自己相似形というやつだ。その上の段はひとつの上向き正三角形で構成され、下の段は左側の上向き正三角形と中央の下向き正三角形と右側の正三角形で構成される。元になっている正三角形の面積が(1/4)だから、上の段の面積は(1/4)×(1/4)=(1/4)^2で、下の段の面積は3×(1/4)^2だ。「あっ」と思う。(1/4)^2が出てきた。級数の和の二項目だ。


 この分割を無限に続ける。各階の上の段をどんどん入れ子になるように。すると、どうだろう。各段の中央、下向きの正三角形の面積だけを全部足しあわせたものは、(1/4)+(1/4)^2+(1/4)^3+...+(1/4)^n+...という級数になっていく。


 そして。


 各段の左側の上向きの正三角形の面積だけを全部足しあわせたものも、同じ面積だ。さらに、各段の右側の上向きの正三角形の面積だけを全部足しあわせたものもやはり同じ面積だ。3つの等しい面積が集まると、全体の正三角形の面積(これを1としたのだった)になるのだから・・・それぞれの面積は(1/3)だ!


 という感じで、こんなふうな、図によるみごとな証明の例が「展示」されている。


 「おもしろいなあ」と思って、しばらく眺めて楽しんだ後、本棚に返した。
 つまり買わなかったわけだけれど。


 いや、でも、また、いつか眺めたくなるかもしれないし。そうしたらそのときは、ほしくなるかもしれない。