絶景は、阿修羅展を見たあとに歩いた国立博物館の庭園だった。まぶしいほどの空に枝をかざす桜は花の房をたくわえ、地面はかすかにピンクを帯びた白い桜の花びらが雪の朝のように敷きつめられていた。白い桜の枝と緑の草を背景に空中を舞う大量の桜の花びら。それは落下するのではなくむしろ舞い上がっていた。降るというよりも漂っていた。桜吹雪というよりも飛びちがう小鳥の群れだった。なんとも幻想的な花見だった。
 その後もサンドイッチとアイスコーヒーで軽い昼食をとってから上野恩賜公園の桜並木と不忍池の桜並木を散策した。ここでも桜の花びらがアスファルトの黒い道を隠すように積もり、風が桜の花びらを振りまいて、多くの人の髪に白い花のアクセントを添えていた。