読書のたのしみ
本が好きだ。といっても、本の形や手触り、あの重量感がたまらない、というのではない。
そこに書かれた文字を読むことで得られる知識や情報やイメージに出会い、それに出会うことで動き出す自分の気持ちや気分の変化が楽しかったり、知識を得ることである種の力の感覚を得られるのがおもしろかったり、事実を知ることで得られる世界がひろがる感覚に興奮したり、著者の語り口に聞き耳を立ててその話に目を輝かせるのが好きなのだ。
ところで、本はおもしろいが、本の中に描かれる人物はたいてい本をそれほど読まない。これは不思議だ。同時に、本が本を好きな読者をうしろめたくさせていることになっていないかと疑問だ。このあいだ読んでおもしろかった「マチルダは小さな大天才」の主人公マチルダは、めずらしく本を読むのが好きな女の子だ。*1しかしその彼女にしても、物語の後半ではほとんど本を読むようすが描かれない。いつも本を携えているという風でもない。
「読むだけではだめだ。行動も必要だ」というのなら、まだわかる。しかし、「図書館なんかに用はない」とインディ・ジョーンズみたいなことをいいかねない本ばかりというのも、それはそれで理解に苦しむ。本を読みながら行動する主人公なんていうのは、いないものか。
電子ブックなら、たくさんの本を詰め込んだ大きなリュックを背負う必要もない。行動中に新しい本をダウンロードすることもできる。電子ブックを片手に活動する主人公なら、物語の主役を張ることもできそうだな。誰かそんな物語を知りませんか?
*1: マチルダは小さな大天才 (ロアルド・ダールコレクション 16)