進化と創造

 CNNのサイト*1に「ダーウィン生誕200年、米国では「進化論」浸透せず」という見出しの記事があった。ダーウィンが生まれて、もう200年がたったんだね。

ダーウィン生誕200年、米国では「進化論」浸透せず

(CNN) 進化論の祖として知られる英科学者チャールズ・ダーウィンが誕生して200年を迎える12日、英国の生誕地などでは記念行事が行われた。進化論は現在、生物学でも重要な位置を占めるが、米国では宗教上の理由などから進化論を否定する人が多く、授業で扱うかどうかについて訴訟に発展する場合もある。

米ギャラップが実施し、近ごろ発表された世論調査結果によると、米国で「進化論」を信じる人は39%にとどまり、全く信じない人が25%だった。36%は進化論に対して意見を持っていなかった。

また、昨年5月に実施した調査では、人間が何万年もかけて進化してきたと考える人はわずは14%に過ぎず、過半数に近い44%の人は、「過去1万年の間に、神が一晩で人間を創り出した」と考えていた。

チャールズ・ダーウィンは1809年2月12日生まれ。ケンブリッジ大学卒業後に英海軍の測量船「ビーグル号」に乗船して、約5年にわたって世界各地を訪問。エクアドル太平洋沖のガラパゴス諸島にも立ち寄り、ここで生物の多様性について考えるきっかけを得たとされている。

 米国ではそもそも進化論がろくに教えられていないのだろうか。それならそもそも進化なんて知らないという人が多くなってしまうわけで、とりあえず知ってる理論が神による創造だけという事情なのかもしれない。
 妻に聞いてみた。「神さまが作ったなんて信じがたい」という答えだった。ふむふむ。「じゃあどうして進化論を信じるのか」と聞いてみた。すると「進化論は常識だ。だから信じてる」というような答え。意外だった。なぜそれが(日本では)常識になってるのかまでは、あんまり関係ないのかなと。

 私が神による創造よりも進化論を支持する。主に2つの理由からだ。

 ひとつは神を持ち出すことの無駄。神というのがそもそもキリスト教の聖書がいうところの神だとすると、神は人間にそっくりな存在である。ということは、神による創造論では、人間の由来を尋ねるのに人間とは異なる人間そっくりな別のなにかを持ち出して答えていることになる。おそらく神の由来を尋ねれば、さらに異なる別の超神でも持ち出すことになるのだろう。あるいはそこから先は尋ねること自体を禁じるか。これは答えというよりも答えていないのに等しい。言い逃れに聞こえるじゃないか。

 ふたつめは進化するという考えの無理のなさ。
 進化の考えでは生物は時間とともにより単純で一様な生物種の集まりからより複雑で多様な生物種の集まりへと変化する。その際に環境との相互作用があって環境条件により適合するものがより繁栄し、多数を占めるようになるとともにその中からさらなる多様性が生まれる。環境との相互作用によって繁栄するものと衰退するものが出てくる。この想定にはなんの不思議もない。

 生物種は原則として同種を生む。分裂して増殖する。または、性差を持つ生物種の場合は、配偶となる個体たちが同種の子を生むことで増殖する。基本的に同一種からは同一種しか生まれない。この原則のなかでは、生物種が多様化するというのは一見不思議だ。しかし実はそうでもない。というのも、種の差というのは結局のところその生物のもつ属性のどれだけ多くが異なるかという量の問題に帰着するからだ。

 生物種のもつ属性は、結局のところDNA分子の塩基配列によって規定される。DNA分子は細胞核の中にある。細胞核は細胞内にあって細胞の分裂増殖を制御している部分だ。DNAはそのすべてが意味のある内容ではない。数パーセントから数十パーセントは役にたっていない中立な遺伝子だ。いいかえればこのDNAという設計図は贅肉だらけの設計図なのだ。
 つまり遺伝子は、少々突っついてもかき混ぜても、基本的な最終産物の性質は変化しない。これはつまり遺伝子が変化した場合、ささいな変化なら全体のなかに埋もれてそのまま維持され後代に受け継がれるということだ。もちろん一気に大規模に変化すればたいていは致命的な変異となる。突発的な大変化はその生物個体を滅ぼすことになる。しかし、DNAには多少の変動は許容されるように十分な冗長性が備わっているのだ。

 こうしてさまざまなガラクタが遺伝子のなかに蓄積することが可能になっている。そうすると、環境条件によってはガラクタが多少とも役にたつ場合も出てくる。少しでも役に立つガラクタは、より有利なガラクタの派生元になる。そのガラクタの変化はわずかでもより環境に適したものにより多く繁殖する機会を与える。このようなことから、生物種の多様化はほとんど必然的なことに思えるのだ。

 さらにもしみっつめを挙げるとしたら証拠の妥当性。これは記事を分ける。