汁かけご飯

 今日の夕食はどうしよう。これはいつも悩ましい課題である。

 外出からの帰路、妻に現状を聞いてみた。
 ごはんは炊飯器にある。味噌汁が一椀分ともうちょっとくらい残ってる。

 で、妻の提案。汁かけご飯。
 「了解。で、ほかには?」と聞くと「それだけでいい」というので、「ちょっとそれだけではさみしい」と答えた。

 さみしいのは私の問題だ。そこで、なにか作ろうと提案した。一皿か二皿。
 冷蔵庫にはなにがあるか尋ねると、ダイコンとニンジンとタマネギとネギとシメジならあるという。
 よし、それでなにが作れる。

 酢豚はどうか。ただし豚抜きで。お昼はケンタッキーフライドチキンで鶏肉を食べ過ぎたので、動物性タンパク質はもう十分だろう。豚抜きの酢豚を提案すると、妻は難色を示す。なぜか。聞いてみると、酢が苦手だからという。酢が強すぎるとたしかに喉の奥が痛くなることがある。それが嫌なのかと聞くと、やはりそうらしい。では酢は控えめにすればいいわけだ。
 他にもう一皿くらい。なにがいいか。ダイコンがあるから大根おろしでいいか。大根おろしの上になにかちょっと載せればそれなりに見栄えもするだろう。

 ということで帰宅後に準備した。

 豚抜き酢豚は洋風の調味で仕上げる。ニンジンとタマネギと白ネギを3センチ幅に刻み、少しのオリーブオイルを煮立てた鍋に投入してやや焦げ目が付くまで強火で転がす。ここに白ワインを注ぐ。さらに醤油を少し垂らす。次いでバルサミコ酢を少々。さらに鍋の中で野菜を転がす。最後に、片栗粉を水と醤油と白ワインで溶いた液を注いでかき混ぜる。これでとろみがでる。白い四角い小皿に盛る。緑色の粉パセリを振る。
 大根おろしはダイコンの色の悪いところを削ってからおろし金でおろす。ガラスのお猪口に盛る。その上に紫色をしたイカの塩辛を少し載せる。仕上げに黒胡椒を振る。
 汁かけご飯は別途ご飯だけを少しの水と鶏ガラスープで煮て味をつける。仕上げに料理酒を少し加えて香りを付ける。黒い丸皿にお子様ランチのライスのようにこんもりと盛る。そこに暖めなおした味噌汁を具がご飯に半分ほどかかるように回しかける。これはスプーンで食べる。

 できあがってみると、私の意見では、それなりにきれいに立派な夕食に見えた。

 食べてみるとおいしかった。妻の炊いてくれたご飯と作っておいてくれた味噌汁もとてもおいしい。
 ふたりで一緒に食べると、さらにおいしい。

 汁かけご飯の夕食としては、上出来であろうと悦に入った。