まんが原稿

 ジュンク堂の地下1階はコミック売り場だ。漫画家の直筆らしいサイン色紙やポップや生原稿が飾ってある。
 カラーの生原稿を見てみたところ、たしかにそれらしい原稿用紙ではあるが、どうみても直筆というよりは印刷。最初は不思議に思った。しかし考えてみればきっと、最近の漫画家はパソコンで原稿を作ることが多いのだろう。そうだとすれば、生原稿といってもカラーの完成原稿になるとプリンタに印刷されたものしかなかったりするわけだ。下書きは紙に鉛筆やペンで実際に描いてスキャンしているかもしれない。あるいはそれさえも最初からタブレット入力だろうか。
 さいとうたかを松本零士など古い世代の漫画家の原稿も並んでいた。それらはさすがに紙に墨汁で描いてあるらしい質感が見て取れる。
 版画の場合ならまだ刷るたびに刷り上がりが異なったりインクの載りが異なったりして仕上がりに差が出るものだ。しかしコンピュータ原稿の印刷結果となるとそんな差はもはやないに等しい。印刷結果しかないとなると「生原稿ってなに?」という気がしてくる。完成原稿よりも、下書き、あるいは途中段階の複数の下書きを並べて展示すると手作り感が見えておもしろいかもしれない。