池袋散策

 妻とふたりして一日家の中でじっとしていると、外へ出たくなる。手をつないで外出する。散歩がいちばんの目的だが、さてきょうはどこへ行こうか。
 迷ったものの、結局、デフォルト書店に出かけることにした。デフォルト書店というのはジュンク堂池袋本店のこと。前に読んでおもしろかったコミック「とめはねっ!」の新刊が出ているらしいのであれば買うつもりでもある。
 池袋までは電車でおよそ15分。歩いて家から最寄り駅までが15分くらいなので、まっすぐ行けば30分程度の距離だ。遠くはない。まわりみちをしてうろうろすれば、散歩にちょうどいい。池袋に到着したころ「そろそろおやつの時間だね」という話題が出た。それもあって、駅から出ても、まっすぐジュンク堂には向かわない。ちょっと冒険してみる。歩いたことのないほうへ。銀行や生命保険会社ばかりが並んでいるほうだ。でも、どうもおもしろそうなものはないなあ。
 なんにもない、ということはなかった。フレッシュネス・バーガーがあった。池袋にもあったんだ、こんなところに。しかしおやつ向けの店ではないので入らない。お寺がある。隣接してお墓もある。ほとんど人通りのない道だが、空手の道場が電光掲示板の看板を出していたりする。またも墓地がある。卒塔婆が立っている。大きくて真っ黒なカラスがそばの木の枝にとまっている。街の通りを一本はいると、こんなに墓地があるとはちょっと意外だ。
 等身大の石像が目についた。でっぷり太って上を向いて口を開けている。なんだろうこの像は。その先にサンドイッチチェーンのSUBWAYがある。知らなかった。SUBWAYも池袋にあったのか。
 池袋はしょっちゅう歩いているのに、いつも人通りの多い同じ道しか歩いていなかったわけだ。いろいろと知らないことがたくさんあることにいまさらながら気づかされた。
 ささやかな冒険は心にちょっとした収穫をもたらしてくれる。