おしっこの快感

 今朝は、長らくおしっこをがまんしていた。寒くって。一時間くらいもがまんしてたんじゃなかろうか。行こうか。行くまいか。布団の中で目をつむったまま、内心がせめぎあう。おとなしく寝ているように見えて、実はハルマゲドン状態だったのである。白い天使と黒い悪魔の軍勢が、長槍を構えてわが脳内を闘いの場に変える。白黒入り交じった黒ゴマバナナジュースのようなまだらの灰色に染めて闘うのだ。

 いつも起きる時刻になって、ようやく意を決した。というより、目覚ましの音にせき立てられて起きた。トイレに立つためだ。まだ走って向かうほどではないから、寒さのほうがこたえる。エアコンのデジタル温度計の数字が8度Cをお知らせしている。ううっ。

 下着姿のまま、寒さに震えながら、トイレまでの数メートルを歩く。次々と部屋の灯りを点け、トイレの灯りも点ける。部屋がよみがえる。トイレのドアノブに手をかけて、開ける。入る。便座の蓋を上げる。構えて、射出。ほとばしる黄色い液体。おしっこだ。がまんに耐え抜いたおしっこだ。おお、行け行け。音を立てながら、どんどん出ていく。いいぞいいぞ。よしよし。

 快感? そうでもない。安堵? そうだ。もうがまんしなくてもいいんだよ的な喜び。慰め。癒し。いや、安心感。それだ。ああよかった。ああ、ああ、よかった。いや実に。感涙、までは出ないけど、それに近い。

 尿道を轟き流れる怒濤の何百ミリリットル。ときに強く、ときに弱く。いくらか強弱の波がある。ときに激しく。ときに穏やかに。ちょっとばかり余裕が生まれてくると、ときどき下腹に内圧をかけて押し出そうと念をこめてみたり。逆にそれを抑制してみたり。強弱をコントロールして遊んでみたりもしたりなんかする。実際に効果があるんだかないんだか、ほんとのところはよくわからないけど。

 終わると、ピンポン球くらいの達成感がある。

 いい朝になる。