ダメダメ未来人

 SFの小道具的な概念に未来人というのがある。未来からやってきた人間のことだ。未来人といえば、超絶的な技術を持っていて、それらを使いこなし、過去に生きる主人公を助けて、危機を救い、自分の痕跡を拭い去り、未来に消えていく。そういうものとだいたいは相場が決まっている。しかし、現代人が仮に遥かな過去に跳んでその時代に生きる元気な若者に手を差し伸べてその時代なりの危機を救えるものだろうか。そう考えると、あまり期待できそうにない。現代人が現代的に生活できるのは、社会的な基盤があってこそだからだ。発電所や送電線や通信衛星や鉄道や高速道路や管制システムや工場やオートメーション。それらなしでは生活すらむずかしいのだから、「未来人恐るるに足らず」と言われてしまいそうだ。もっとも、これは人類がしだいに社会性動物である特徴を進化させてきているということなのかもしれない。未来人と過去人との戦いにでもなれば「未来人ひとりひとりは弱くても、数集まればもはやこれまで」という感じで、一対一なら過去の人間に歩があるが、多数対多数なら過去の人間に勝ち目はないことだろう。少数対少数ならちょうど拮抗するかもしれない。それをやってみたのが「戦国自衛隊」か。そのくらいの集団どうしでなら、うまいぐあいに物語が作れるということなのかも。