わっと歓声を上げているような花の群れ。義理の両親から届いた花だ。
 中でも最初に目にとまったのは大きくて白くてつややかな葉っぱ。まるでプラスチックでできているみたいにつやつやしている。よく見ると、その葉の根元には白くて細長い突起が伸びている。ワラビーの陰茎のような、小指のような形の突起である。
 花の群れの中で存在感が大きいのは、フルーツ牛乳の色をした薔薇の花だ。鹿革のようなきめ細かい表面には透けるような脈が走っている。鼻を近づけるといい匂いがする。
 大きな緑色のツクシのような穂の周囲に小さな紫の小さな花を放射状に飾り立てているものもある。
 もじゃもじゃの緑のヒゲを小さなアフロヘアのように丸く束ねているものもある。
 黄緑色の蕾がいくつか花の群れからはみ出している。
 群れから躍り出るようにしているのは、多数の蕾が集まって蛇の頭のような卵形を形作っている花の穂だ。緑の蕾が頂部に近づくにつれて紫に染まっている。その濃い緑色の茎は、太く、硬く、曲がりくねっており、まったく太い針金で作ったようにしか見えない。
 花占いに使うような花がここでは黒い。濃い赤紫の花びらに、まっ黒な中心部。まるで写真のネガを見ているようだ。
 そうかと思えばひらひらした白い装飾的な襞を花びらに持つ花もある。その花はかすかに緑の色をただよわせ、その花の奥にはくっきりとした緑の雌しべと濃い黄色の花粉を戴く雄しべの取り巻きがある。雄しべの数は少ないもので三本。多いものでは七本くらいある。
 海の底に棲むイソギンチャクのような黄色いオレンジ色の花もある。海藻に擬態するタツノオトシゴのような姿だ。赤い花もあって、同じように海藻を思わせる。まるで毒を持つかのような妖しい花だ。
 そんな花の群れの中に、空から落ちてきたように少し斜めに埋もれかかっている白い紙のカードには、カラフルなラメ入りの縁取りがされている。「お誕生日おめでとう」と細いペンで書かれた文字が微笑んでいる。