天国

 死後も現世同様の意識が継続するという宗教的スキーマがある。そのスキーマのもとで、さまざまな天国像が語られている。しかし、それらには得てして本や本棚が出てこない。
 お酒はあっても本がない。お花畑はあっても本棚がない。天国があったとしても、そんなところで幸せか?という疑問を妻に提出してみた。
「どう思う?」
「天国が退屈とかいうのって退廃的やろか?」
「たとえば…、永遠に続く朝寝。それやったら本はいらん?」
「それええなあ。」
「飽きひん?」
「朝寝がうれしいのは起きなあかんっていう制約があるからかも。」
「ほなそのうち起きたなるかな。」
「起きたら退屈そうやな。」
「退屈せえへんためには、なにがあったらええのん?」
PS2やろ。Wiiやろ。DSやろ。…。人形やろ。ミシンやろ。本やろ。そんなもんやろか。」
 どうやらいま趣味でやっていることを続けるために必要なものがぜんぶ天国にあればいいらしい。
「ほないま天国やな」