Just for Fun

 "Just for Fun The Story of an Accidental Revolutionary"。12ページある索引を入れて全262ページ。きょう読み終えた。
 Linuxの開発を始めたLinus Torbardsと、ジャーナリストDavid Diamondの著書。
 これを読んでもとくにLinuxがどういう使い勝手のOSかはわからないだろうが、どんな人が作り始めたのかはなんとなくわかったような気にはなれる。
 ぶさいくで、運動が嫌いで、太っていて、人付き合いが嫌いな子供だったと自分を振り返るLinusが、コンピュータやプログラミングに魅せられて、没頭し、OSの開発に集まってくる人たちをまとめ、先人とのいさかいも経て、しだいに名誉と人気とお金が寄ってくるなかで、結婚もし、子供も生まれ、フィンランドからアメリカに移住し、会社に勤め、コンピュータ界の有名人たちとつきあい、運動まで好きになってきたことが語られる。
 みずから"Linus's Law"(リーヌスの法則)と呼ぶ、生物や文明の進む方向性についての洞察がおもしろい。

       Survive. Socialize. Have fun. That's the progression. And
that's also why we chose "Just for Fun" as the title of this book.

(p.246)

       生き残れ。社会化せよ。愉しめ。それが進歩だ。そしてこれが、
なぜ「ただ愉しむために」をこの本の題名に選んだかの理由でもある。

 つまるところ衣食足りて礼節を知り、礼儀をわきまえて快楽を知る、ということだろうか。生き残りに汲々としなくて済むようになれば交際に向かい、交際に汲々としなくて済むようになれば快楽に向かう。我々人間は、まず生き残りを、次に人付き合いを心配しなくてはならないのだから、それらを心配しなくてもすむように生活の質を上げ、楽しみに浸っていられるような段階に進むべきだし、進んできている、というものだ。
 これはちょうど、アシモフの小説でロボットが従うように作られている制約、すなわちロボット工学の三原則(人を守れ。人に従え。壊れるな。)とは逆順になっているようで、興味深い。アシモフはこのロボット工学の三原則を、ロボットばかりではなく道具の三原則でもあると言っていたし、この三原則をこの順に優先できる人は模範的な人間でもあるとも言っていたのだが。