DVD「となり町戦争」

 原作小説が出版されたとき、読んでみたいなと思いつつ読まずにいた、その小説の映画版。

 町議会の議決によってとなり町との戦争が始まっていた。「となり町戦争」は、そんな意外性のある「戦時中」の田舎町の物語だ。退屈で事務的な町役場の手続きの衣をまとった戦争が主人公をとまどわせる。日常にぽっかり開いた落とし穴のような舞台設定が少し薄気味悪くて興味深い。
 主人公の男は、町役場の有能だが規則づくめのの女の導きで半信半疑ながらその戦争に巻き込まれていく。次第に、ほんとうに戦争をやっているんだ、この戦争で人が死んでいるんだ、個人の力ではもはや止められないんだ、というふうに状況が進展する。
 そして、「業務遂行のため」に偽装結婚してとなり町に潜伏する主人公たちはお約束どおりのストーリー展開で恋愛関係になり、ラストでは戦争に流れてゆく町の趨勢のなかで自分たちの感情を取り戻そうとして抱き合う。
 こう書くとなんというか、ありきたりな筋書きだが、業務として、義務として、仕事として、感情を殺して日々を生きていくこと(「戦争」)に疑問を持ち拒否しようとする、という筋書きはそれなりによかった。そのうち原作も読んでみようかなとちょっとは思った。

 キャスティングは、主人公が高齢化しすぎじゃないかとか思った。江口洋介原田知世だが、ふたりともこの映画の時点でほぼ40歳とか。若くないことが一概に悪いとは言えないし、確かにどちらも悪くない俳優ではあった。しかしどうにも瑞々しさが足りない感じは否めない。ある種の美しさはあっても、枯山水のような趣というか。もっとも、若い俳優を使えば使ったで、設定の作り物っぽさが浮き彫りになってしまったかもしれない。