「たそがれ清兵衛」

たそがれ清兵衛 (新潮文庫)

たそがれ清兵衛 (新潮文庫)

 短編集。表題作は、映画にもなった有名な小説だ。
 表題作だけを、眼鏡を直してもらったあと、すぐ横にある書籍売り場内で立ち読み。
 マイホーム主義者だが剣の腕は立つ井口清兵衛という男の話。妻が病に臥し、身の回りの世話や家事のために定時になると誰よりも早く退勤するために、小説のタイトルになったあだ名は、たそがれどきになると元気になるということからついたという設定。
 ふだんは目立たない男が、妻のために剣客業務を鮮やかに、いともたやすくこなす姿が粋に映る。
 淡々とした筆致だが、よくできたエピソードだ。この著者のものをはじめて読んだが、時代物作家としては定評のある人らしい。