2014-04-13 「純情小曲集」より「旅上」(萩原朔太郎) 翻訳 原文 ふらんすへ行きたしと思へども ふらんすはあまりに遠し せめては新しき背広をきて きままなる旅にいでてみん。 汽車が山道をゆくとき みづいろの窓によりかかりて われひとりうれしきことをおもはむ 五月の朝のしののめ うら若草のもえいづる心まかせに 翻訳 フランスに行きたい と思っても フランスは あまりに遠い せめて 新しいスーツを着て きままな旅に 出かけてみようか。 汽車が山道を進む そのとき 水色の窓に寄りかかって ひとりそっと うれしいことを考えよう 五月の朝の 夜明けの雲 若草が芽生えるような 心のままに